無錫を出発する日が来た。 時間が経つのはどうしてこんなに早いんだろう。 彼らは、僕と一緒にいる時、決してお金をうけとろうとしなかった。 遊ぶときはことごとくおごってくれた。 それだけは申し訳なさが残った。 そしてまた、僕が彼らにとってお客さんであったのだ、ということを自覚させられた。それはちょっと寂しいことだった。 しかし、もし日本で僕が異国の人と出会っていたとして、同じことができただろうか。 ただ、英語力の乏しさを恐れて話すこともできずに震えている自分の姿だけが目に浮かぶ。 僕は彼らのおかげで、たとえもしこれから先中国人にどんなひどいことをされても、中国という国を好きでいるだろう。 そういうことなのだ。 彼らは自分たちの住む中国を愛し、誇りに思っている。 だからこそ、その国の代表として、訪れる旅人に優しく、親切に接することができるのだ。 もちろん、それがすべてではないと思うけれど、少なくとも僕の持っていないものを彼らは持っていた。 彼らはたくさんのことを僕に教えてくれた。 だらだらしていたら、出発の時間が来た。 フェーフェンとツァイドゥンが宿に迎えに来てくれた。 列車でのおかしや飲み物を買ってくれた。 「もうだいじょうぶだよ。自分で買うよ。」 「いや、これが、僕たちが君の旅のためにできる最後のことになるだろうからね。」 「ありがとぅ。」 駅の中には切符を持っている人しか入ることができない。 ここでお別れだ。 「It`s time to say Good Bye 」 何と言ったらいいかわからなくてもじもじしていたら、フェーフェンがそう言った。 Thank you. 謝謝。 ありがとうございました。 いろんな言葉を並べてみたけれど、自分の気持ちを伝えることができた気がしない。 なんてもどかしいんだろう。 こういう時なんて言えばいいんだろう。 伝える言葉がみつからないよ。 言葉なんて、ぜんぜん意味ないじゃないか。 きっと、こういう時、言葉は必要ないんだね。 「じゃあまたね。」 ツァイドゥンがつたない日本語でそう言ってくれた。 よし、 行こう。 駅の中でも、僕は何度も振り返り、彼らに手を振った。 僕の旅は続いていくんだな。 そして、彼らの日常も、明日からいつもと同じようにこの場所で続いていくんだ。 でも、どんなに遠くても、彼らは僕の近くにいる。 きっとまたいつか会えたとき、僕らは笑って肩を叩き合うだろう。 それだけは実感できた。 なんか、感傷的になっちゃうな。 そんなキャラじゃなかったはずなんだけどな。 |
今でも、知り合ったばかりの人に対して、
全おごりでもてなす気前の良さを、まだ僕は持っていない。
フェーフェンとツァイドンをただただリスペクトする。
Time to say good bye.
自分にとって印象深い言葉の一つ。
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