部屋にCAMBRIDGEのノートが転がっていた。
開いてみると、モルガン・スタンレーインターン時代のメモ書きがあった。
大学3年生の時、
僕はモルガン・スタンレー(現モルガン・スタンレーMUFJ証券)のインターンに参加した。
インターンの応募には、
「とにかくお金が大好きです。だからお金稼ぎがしたいです。」
といった趣旨のふざけた志望動機を書いた。
それで通った。
一流の外資と言われる会社が、それで通すのか、
懐の深さと大人の良い加減さを当時は感じたものだ。
実際に、社員の人からは、興味を持ったから呼んでみた、と言われた。
夏のインターン合格者は10名程度。
そのままインターンを頑張って、外資系証券会社に就職していたら僕の人生もまた違ったものになっていたかもしれない。
しかし当時の僕にはその選択肢が全く眼中になく、
インターンは社会科見学みたいな軽いノリだった。
だから適当な志望動機を書いたのであって、
当時のモルガン・スタンレーの人たちには申し訳なく思う。
そのころの僕は学校を休学して世界一周旅行に出かけようという気満々だったのだ。
モルガン・スタンレーの東京支社は小さな組織であるようだった。
そこで働いている人たちは普通の人たちで、
めちゃくちゃお金持ちというようには見えなかった。
実際は結構なお金持ちばかりのはずだった。
でも、綺麗なお姉さんが、ほとんど休みなく忙しそうに働いているということはわかった。
参加したい飲み会に参加できることは貴重である、といったことが言葉の端端からうかがえた。
アンジェラ・アキの姉だか妹だという人が、トレーディング部門で働いていた。
たくさんディスプレイが並ぶデスクの前に座り、
その人にトレーディングとはどういう仕事かと教わった。
仕事の内容などほとんど聞いておらず、
ただ、綺麗な人だなと思って眺めた。
女性の比率が多い職場だと思った。
外資というのは総じて当時からそういうものだったのだろう。
数日間で、仕事のことを懇切丁寧に教えてもらった。
・Distribution 営業全般
・Client Trading お客様の取引管理
・Product 商品の作成
・Trading 自己資金運用
・Prime Brokerage 業務全般
・CMG (Client Management Group) 分析
こんな部署があって、それぞれの部署の人たちが自分たちの業務についてザックばらんに話してくれた。
学生向けに優しく教えてくれたつもりなんだろうけど、当時、金融業界知識ゼロの僕には専門用語ばかりで全くちんぷんかんぷんだった。
ちゃんと勉強して、当時持ってた金をガンガン投資してたら、
僕の人生もまた違っていたかもしれない。
でも僕は金融業界に全く興味がなかった。
金儲けをすることに全く興味がなかった。
金で金を生み出す仕事は虚業であり、その中に自分の身をおきたいとは微塵も思っていなかった。
投資家の側よりも、手触りのある付加価値を生み出す実業の側に携わりたいと、
朧げながら、考えていた。
証券会社のインターンに参加した本当の目的は、そうした自分の考えを、実際に働いている人たちを見て再確認することだった。
なぜ、そうしようと思ったのか。
東大生の中でも就職的に優秀な奴らは皆こぞって、外資系証券会社やら外資系コンサルティング会社を受けようとしていたから。
周りの奴らが目指している人生がどういうものか、一眼見てやろうと思ったのだ。
そこには全く興味の持てない世界があった。
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