2007年4月6日 中国 西安より 僕の恋愛についての話 2

世界一周ブログ
>1のつづき


近くのレストランに入って僕はミルクティーを、彼女はコーヒーを注文した。
僕のミルクティーはとても甘く、ぬるかった。
お互いにお互いを忘れないように、ということで昨日約束していたものを交換した。
何もあげるものをもっていなかった僕が渡したのは友人のTから譲り受けた幸守だった。きっとTは許してくれると思う。
僕は、中国でたくさんの幸せな出会いをもらったから、今度は君に幸せがたくさん来るように、これをあげるよ。

彼女がくれたのも、中国のお守りだった。
赤い紐に昔の硬貨が5枚ついていた。
いつでもつけているようにね、そう言って彼女は僕の首につけてくれた。

僕たちは彼女の大学に行くことにした。
それは、西安市街から南へ40分ほどいったはずれにあった。
つくられたばかりのキャンパスは、広いわりにemptyで無機質だった。
彼女はこの大学の風景が嫌いだという。

彼女のレッスン室で、古琴を少し教えてもらった。
この小さな狭い部屋で、彼女は毎日この古琴を弾いているのだ。
将来は、海外に琴奏者として留学したいと彼女は言っていた。
僕はその部屋にある壊れかけたアップライトピアノの前に座り、昔よく弾いていたショパンの曲を必死で思い出して紡いだ。
彼女はその曲をわかってくれた。

大学の近くの、彼女がたまに食べに行くというレストランへ行った。
Goobye dane
そう言ってビールを乾杯した。

別れが近づくと、寂しさがどこからかやってきた。

彼女と別れるのは、寂しかった。

しかし、僕は旅を選んだ。

それは思考の余地なく僕の中で決定されていたことだった。

「今度いつ逢えるかわからないね。ねぇ、いつ会えるの?」
彼女は僕に聞く。
「わからない。君に嘘はつきたくないんだ。でもまたきっと会えるよ。たぶん、また来年会える。」
僕はそう答えた。しかし、それですら確かなことではなかった。
僕の気持ちは重くなった。
ここでサヨナラを言うのは嫌だった。きっとまたいつか会おうとも思った。
しかし、面倒くさいなと思う僕もいた。
僕は、余計なことばかり考えていて、この大切な時間を大切にすることができなかった。

時間はあっという間に過ぎていった。
僕は彼女を大学まで送っていくことにした。


大学の門の前で、僕たちはキスをした。
次に会うときまで、その感触が体に残っているように。

バスが一本通り過ぎ、また一本、また一本、最後のバスの発車時刻まで、僕たちはそうしていた。

「I love you.」
「Dont forget all the time until we meet again.」
「I love you.」
彼女は何度も僕に向かって言った。
「Do you love me ?」


「Yes, I love you .」
このセリフが、僕にはどうしても言えなかった。

その言葉は、半分ホントで半分ウソだった。

「Until next time , Dont forget me . Love me . OK?」
なんてセリフは言えなかった。
そんな無責任なことは言えなかった。

ただ、
「Thank you .」
と繰り返すことしかできなかった。

僕は、こういう時すぐマジメになってしまう。

そういう自分が好きで、やっぱり嫌いだ。

僕は、精一杯の愛の言葉を彼女にかけてあげればよかった。

愛なんて、その時だけの夢物語にすぎないんだから、、

きっとしばらく時が流れれば、彼女は新しい男と出会い、僕のことなんか忘れてしまったかのように新たな恋に溶けてゆくんだから、、


しかし、僕にはそれができなかった。

「Thank you 」と繰り返して、彼女を抱きしめることしかできなかった。

バスの発車時刻だ。

僕はバスに乗り込んだ。

「Do you love me ?」
彼女が大きな声で僕に向かって叫ぶ。



「Yes」

きっと僕の声は届かなかったと思う。

遠く向こうの彼女が、振り返って校門に入っていくのが見えた。

そのとき彼女は、どんな顔をしていたのだろう。

僕にはもう知る術はない。

僕はバスの座席に腰を落とした。

なぜか目がにじんだ。

その理由は僕にはわからなかった。

いろんなことでごちゃまぜだった。

ただ、

Ankiの思いに答えることができなかった自分に、
バカみたいに冷静な自分に、
バカみたいに真っ正直な自分に、

僕は嗚咽がでるような後悔と怒りの感情を抱いていた。

それは僕の心をずっと締め付け続けた。



今、やっぱり思う。

僕はAnkiのことが好きだったのだ。

旅してる時の恋愛は、さっぱりしてればいい思い出になるけど、

本気になると、結構面倒臭い。

その先の旅の予定とか、そういうの全て捨てなきゃいけないから。

僕はこの時、まだ旅を始めたばかりで、

その先に待つ世界にワクワクしていたから、

先に進むという選択肢以外にあり得なかった。

この時の辛い思いのせいで、その後、旅の中で恋愛をするのをやめてしまった。



数年後、彼女の彼氏みたいな人から突然メールが来た。

「Ankiに2度と近づくな。」

とだけ書かれていた。

もしかしたら、

彼女は、その後何年もずっと待っていてくれてたのかもしれない。

大学の前でお別れ

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