目が覚めても、僕はベットから起きることができなかった。 布団にくるまって震えていた。 怖い夢だった。 とても怖い夢だった。 東大を自分の身勝手な都合で離れた僕には、もはや、東大にいる資格は存在しなかった。 僕にはもう一度入学試験が課された。 もう一度あの壮絶なる試験を突破しなければならない!? しかし、僕には十分すぎるほどわかっている。 あの時は、たまたま運が良かっただけなのだ。たまたまのたまちゃんだったのだ。 僕は、勉強しているふりをして、ずっとオナニーしていただけだったんだ。 僕には、ほんとは相応しい実力なんてものは無いんだ。 頭の良いふりをしていただけの、ただのちゃらんぽらんなんだ。 あれは、運がよかっただけなんだ。 もう一度、あれを突破しなければならないなんて、、、 絶対に不可能だ!!!! どうしよう。。 どれだけ勉強すればいいのか、途方もつかない。 もう、数学も理科も地理も、みんな忘れてしまった。 いったいどこから始めればいいんだ!!! そしてどこまで!!! 想像もつかない。 僕は焦る。 机に向かう。 しかし、手が振るえ教科書すらうまくめくることができない。 恐怖に支配された僕の頭の中には、何も入らない。 ただ、時間だけが高速で過ぎてゆく。 さらに焦る。 そしてさらに焦る。 最悪の循環。 僕の友人は華やかな未来へと進んでゆき、僕だけが一人取り残される。 楽しい町内会のお祭りにみんなでかけてしまったのに、僕だけ取り残されて一人ぼっち。 彼らに追いつくためには、もう一度仲間に入れてもらうためには、是が非でも東大に合格しなければならない。 失敗はゆるされない。 幸せは、合格の先にしかありえない。 失敗したときに待っているのは、底の無い不幸だ。 でも、僕にはわかっている。 絶対に無理なんだ。僕にはそんな頭も力もないんだ!! それでも勉強しなければならない。 不可能のために、努力しなければならない。 逃げられない恐怖。 骨まで凍りつくような恐怖。 ベットで震えながら気づいた。 東大っていうのは、いつの間にか、僕の居場所になっていたんだ。 ほかの何を失っても、それだけは最後に残ってくれる僕の居場所。 それがあったから、僕はこうして、平和に、不安も感じずに、旅をしてくることができたんだ。 僕は、僕の居場所に、そこにいる友人たちに、守られていたんだ。 僕は、やっぱり、一人で生きていけるほど強くないんだね。 僕には、安心して帰ることのできる居場所が必要なんだ。。。 僕はまだまだ、おこっちゃまくん。 目覚めた僕は、死海に行った。 そこは地上でもっとも低いところにある地上。 浮くとか、浮いて本を読むとかそんな余裕はまったく無かった。 ちょびっついて、飛び込んで目に入った海水は、硫酸か!? そのしょっぱさは、塩のびん一本飲み込むのに等しい。 とても、生命の存在できる場所ではなかった。。。 そんな僕は、まだまだ、おこっちゃまくん。 |
今でも、たまに夢を見る。
入試に落ちて、大学に入れなかった夢。
単位を取るのを忘れていて大学を卒業できなかった夢。
あまりにもリアルで、怖い夢。
起きたら、たくさん汗をかいていて、
それが夢だったことを確認し、心底安堵する。
そんな夢は、大学のこと以外あまり見ない。
僕は、深層心理で自分が東大にちゃんと入って、ちゃんと卒業したと信じていない。
本当は入学できてもいないし、卒業できてもいないのではないか。
そう思っているのだと思う。
実際のところ、在籍中はほとんど大学にいなかったから、
大学時代の記憶があまりない。
ほんとに僕はどうやって卒業したのだろうか。
まじで卒業していないんじゃないか?
世界を旅していた頃、僕にあるアイデンティティは、東大生ということだけだった。
思いの外、僕はそのアイデンティティを大切にして、しがみついていた。
だから、こういう夢をよく見た。
そのアイデンティティは確かに、最後には頼れる居場所として、
なんとなくいつも自信を与えてくれていた。
少なくとも東大っていう肩書はあるから、
ちょっとこんな挑戦してみるか、あんな挑戦してみるか、
全て失っても、僕、一応、東大生だから。
そうやって生きてきたんだと思う。
東大出身。
大企業に勤めていた頃は全く役に立たなかった。
特に僕は海外にいたから、日本の最高学府は大して意味を持たなかった。
でも、田舎に戻ってきて、この肩書は、今でも活躍してくれている。
東大は一番コスパがいい資格だと思う。
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