香港から2時間ほど電車に乗ると広州だ。 寝ていたら着いた。 乗り物に乗るととりあえず寝る、という癖が僕の体には染み付いている。悪い癖。一生に一度しか見ることができないかもしれない車窓からの風景を見逃してしまう。 少し後悔しながら電車を降りた。 中国本土入国しょっぱなにして窮地に陥る。 自分の居場所が全くわからない。 中国語が全くわからない。 しかし、そんなことは大した問題ではない、最悪なのは僕が中国のお金を一元ももっていなかったということだ。 香港のようにどこでもすぐに両替できるとたかをくくっていた。 中国は今HAPPY NEW YEARで銀行が開くのは一週間先らしい。ATMもなぜかお金をだしてくれない。ホテルも全く受け付けてくれない。 どうすりゃいいわけ? え?一週間何も食わずに野宿? しゃれにならん。 駅のまわりを探し回って、中堅どころのホテルに目をつけて泣きついた。 高級ホテルだと規則が厳格でどんなに頼んでも受け付けてはくれないだろうし、安いホテルだと両替そのものを取り扱っていないだろう。中堅どころの経営の緩そうなホテルならもしや、と考えた。 人間は異性には優しいという習性があるので、女の人を探した。 めぼしい人にあたりをつけて頼みに頼み込んだ。 2万円を両替してもらうことに成功。 シェシェーをその人に向かって連発した。 シェシェーシェシェーシェシェーシェシェー。 おかしな人だと思われただろう。だが、それくらいシェシェーの感情が僕の体中から溢れた。 なんとか人間らしい生活をする権利を得た僕は、 宿を確保して街をぶらぶらすることにした。 広州には珠江という河が流れている。 その河にそって歩いた。 しばらくいくと、釣りをしているおじさんをみつけた。 風流だな。 と思いながら近づくと、動きがおかしい。 何かおもいっきりひっぱっている。 先端の針をみて驚いた。 エサやルアーといったものはついておらず、たくさんの針が合体した形状になっている。どうやらそれを魚のいそうなところに投げ込み、思いっきりひっぱって、魚を針にひっかけて釣ろうとしているようだ。 これほど激しい釣りを僕は見たことがない。そもそもこの行為を釣りと呼べるのだろうか。 一日中そばで見ていても魚を引き上げるシーンにはお目にかかれそうもないので、僕はその場を立ち去ることにした。 針に釣られないように用心深くそばを通りすぎた。 中国は薄い。 なんとなく全てがかすんで見える。 遠くは白い霧に包まれているようで視界はよくない。 これはたまたま今日の天気によるものというわけではないのだろう。 街の雰囲気は日本に似ている。 ずーっと掃除をしないまま薄汚れてしまった日本、という感じ。 車はところかまわずクラクションを鳴らして行き交っている。 煩雑な日本だ。 騒音の中をしばらく歩き、宿に帰って寝た。 |
今では広州も発展している。
でも、当時はまだボロボロなところが目立ち、発展途上国感に溢れていた。
街も整備されていなければ、ルールも整備されていない。
変なところが沢山。そんな中国の怪しさに僕は魅了された。
コメント