言葉は、発する人によって、受け取られ方が変わるという話

日々考えていること

子供の頃、僕のおじいちゃんが自慢げに言っていた。

「髪の毛の健康のために、俺は頭を石鹸で洗っている。」と。

「そうすれば、強い髪の毛ができるのだ。」と。



おじいちゃんは、つるっ禿げだった。



子供ながらに思った。

おじいちゃんは禿げてるから、その言葉は信用できない。

思っても、口に出して言わない聡明さを僕は持っていた。




僕は、ちょっと前に辛い思いをした。


起業家志望が集まるMt. Fuji イノベーションキャンプには、

参加者とメンターという2つの立場の人がいる。

参加者は事業プランを持って、メンターに相談する。

メンターは参加者の相談に乗ってあげる先生、という立場。

いわば、メンター > 参加者 であり、

メンターの方が偉い、という暗黙のポジショニングがある。



別の集まりで、メンターの人にたまたま再会し、同席する機会があった。

その人は、その場所でもメンター面して僕に接してきた。

まだ起業家志望で、何も持っていないお前は、俺より下だ。

大人しく言うことを聞いて媚びへつらえ。

というマウンティングが言葉の端々から伺えた。

その人はただのNTT何ちゃらの社員なのだか。



メンター「お前、東大出てるけど、工学部の中で一番下の海洋船舶出身だから、全然優秀じゃないよな。だから言ってることイマイチ信用できないんだよな。」

僕「いや、あなたの時代はそうだったのかもしれないけど、その後、海洋船舶はシス創っていう学科になって、工学部では航空宇宙の次に入りにくい学科になってましたよ。」

メンター「お前、人生経験全然足りてねえよ。やっぱりもっと世界を見ないとダメだな。」

僕「え、前職では海外駐在して香港に永住権も持ってるし、学生時代は世界一周旅行してたんで60カ国くらい行ってますよ。」

そんなやりとりが、何回も続いてイライラしてきた僕は言った。

僕「なんなんですか? Mt. Fuji イノベーションキャンプって、
  マウンティング フジ イノベーションキャンプだったんですかね。
  僕は、まだ何も成してないかもしれないけど、
  そんな偉そうなあなたは何を成したのか教えてもらえませんか。」


そして、メンターに赤ワインをぶっかけられた。

メンター「表にでろ。お前調子に乗ってるからぶっ飛ばしてやるよ。」

正直、アホかと思った。

いつの時代の何様のつもりで生きてるんだ、と。


しかし、同時に反省もした。

頭から舐められていると、何を語ろうが、聞いてもらえない。

そもそも、そういうことを言っていい立場ではないと相手に認識されているから。

だから、何か意見を言う前に、自分の立場を明確にする必要がある。

そうしないと、僕の言葉は、ちゃんと僕の言葉として伝わらない。

発する者が何者であるかは、言葉の威力、飛距離に直で影響する。

僕は決して、メンターが下した裸一貫の起業家見習いではなかった。

すでにいくつか事業は持っているし、部下も結構いる。

事業を作った経験も、運営の経験もある。

バックグラウンドをちゃんと説明して、話していれば、

その言葉は多少は聞いてもらえるはずのものだった。

それを何も持たない風の裸一貫で乗り込んでいったから、

見下されて当然だし、そのポジションに甘んじた振る舞いをすればよかった。


馬鹿にされ、マウンティングを取られてしまったら、損をするシーンもある。

いかに自分は経歴がちゃんとしてて、優秀であるか、

そのことを伝える努力も必要である、とわかった。



実際に、発言力のある人はそうしている。

発言する前の、ほんの数言の自己紹介の中で、

自分の発言が聞かれる価値のものであると、

周囲にわからせることを怠っていない。


僕は反省した。

次はもう少し上手く立ち回らないといけない、と。





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