経営する側になって裁判が身近になった

経営のこと

普通の人が裁判するとなったら、離婚する時くらいだろう。

社員は会社に守られている。

会社で何か悪事をして、訴えられたとしても、

その対象は会社であって、社員ではない。

でも、経営する側に立ってみると、裁判がとても身近になる。

会社は個人の何倍もの金額の契約をいくつもするし、

営む事業が及ぼす社会的な影響は個人に比べるとずっと大きい。

活動規模が大きければ、必然的に問題が発生する確率も高くなる。

僕らが引き継いだ会社は、過去、押し売り業者から悪徳な契約を結ばされていた。

ITのことなど全くわからない中小企業の社長に、

全く必要のない機器を高値で売りつける。

株式会社C.S.Rという池袋に本社があるらしい会社は、

犯罪ギリギリのことをしている。

買わされたセキュリティ機器は、外部の攻撃から社内ネットワークを守るというものだが、僕がその機器を発見した時は全くネット環境に接続されずに地面に転がっていた。

支払う金額を見て愕然とした。

月1万円の六年リース契約。合計72万円。

リースされているウォッチガード Firebox-T30の市況価格は10万円に満たない。

実質7倍の金額を払わされている上に、これはリースであって所有権は会社に帰属しない。

毎月1万円という比較的少額だから無視してしまいがちだ。

でも、会社に植え付けられたこれは紛れもなく、じわじわと血を吸う寄生虫である。

調べれば調べるほど腹が立ったので、支払いを強引に停止した。

そしたら、訴えられた。

こうしたリース契約で泣いている中小企業は多いだろう。

契約構造が複雑になっていて、中小企業の社長個人で太刀打ちするには荷が重い。

結果、泣き寝入りしてしまうから、こうした悪徳業者が蔓延ることになる。

C.S.Rは、会社に売りつける段取りを取った後、クレディセゾンとリース契約を結ばせる。

C.S.Rとクレディセゾンとの間には債権譲渡が行われている。

クレディセゾンはC.S.Rに60万円を支払う代わりに、合計72万円の月次払いを受ける権利を得る、といった具合。

実質的に契約を結ぶのは会社とクレディセゾンの間になる。

この時点で、悪の元凶であったC .S .Rは消えてしまう。

支払いを滞らせた時に訴えてくるのはクレディセゾン。

クレディセゾンは裁判と、債権取立てのプロである。

金銭トラブルが発生したら即裁判に持ち込む。

法廷にはクレディセゾン案件がひしめいている。

法廷に出廷する係は裁判所が職場みたいなもの。

ずっと裁判所にいて、次から次に裁判を梯子して交渉をしていく。

東京で訴えられたので、こちらはわざわざ山梨から出向く羽目になる。

クレディセゾンと会社の間のリース契約はシンプルで、

支払いが滞ったら残金全額一括支払いというもの。

C.S.Rの悪徳さなどは全く考慮されないし、議題の外である。

会社の負けは訴えられた時から決まっている。

会社が対抗する手段があるとすれば、

それはC.S.Rに対して別の裁判を自ら起こす場合だけである。

それでも詐欺罪の立証は難しいだろう。

リース契約相手であるクレディセゾンへの支払い義務は絶対に免れない。

知人の弁護士は、

裁判になって

負けが確定しても、

どうしても払いたくない時には、

「金がない」

で貫き通せと、アドバイスしているらしい。

裁判で勝つことと、金を取れることはイコールではない。

勝った後、しっかり回収することが大変。

相手が金を持っていなければ、何も得られない。

だから金がない、という主張に、原告側はどうしても譲歩せざるを得ないのだと。

それは置いておいて、

リース契約が間に入るこうした案件は極めて面倒くさく、危険だ。

出てくる相手は訴訟のプロであり、買わされた相手ですらない。

C.S.Rは売った者勝ち、あとは知らぬ存ぜぬで次の獲物狩りに向かっている。

勝てるわけがない。

リース契約だけは絶対にするな。

これは僕の会社の方針にしている。

今後も会社を経営していたら裁判はついて回るだろう。

裁判の最大の恐ろしさは、時間と金を不毛に奪われること。

できれば避けて通りたい。

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