僕は今悩んでいる。 西安のベッドの上でめちゃめちゃ悩んでいる。 僕が男ならばデイブたちとの約束を守るべきだ。 もう、それはずいぶん前に決められたことなのだから。 彼らと山に行くべきだ。 しかし、しかしだ。 僕の心は動いてしまった。 もうすっかり動いてしまった。 西安に残って、ひょっとしたら彼女にもう一度会えるかもしれないチャンスにかけたい。 Ankiにもう一度会いたい。 昨日のクラブでの記憶が僕を苦しめる。 彼女は中国でできた初めての[女の子]の友達だった。 そして、やはりこれが一番の理由なのだが、 彼女は可愛かった。 決断を迫られているこんな時に、彼女に電話をしようかしまいかためらっている自分がおかしい。 そうだ、まずは彼女に連絡してみよう。 僕は飛び起きてフロントの電話をプッシュした。 彼女にはつながらなかった。 Ankiに会える保障はない。 だが、彼らとはもう山へ行きたくない。 山には興味ないし、それよりも、彼らは一緒に旅をしていて楽しい奴等ではないのだ(デイブは別だが) 彼らには環境適応能力というものがなかった。 イングランド人の殻を常にかぶっていた。 外から見ているだけで、中国の中に飛び込もうとしなかった。 彼らはまだ、幼かったのかもしれない。 もうひとつ気に入らないのが、彼らの旅がツアー旅行になりさがっていることだ。 旅行会社を通さなければ乗り物の手配すらできない。 しかも、それが半端なく遅い。金もかかる。 同行させてもらっている身ということで黙っていたが、もううんざりだ。 もう我慢するのはたくさんだ。 僕のやりたいようにするのがこの旅の目的のはずだ。 僕の望むように行動したい。 それでいいはずだ。 山に行かなければデイブたちとはお別れかもしれない。 僕は彼らよりも、彼女を選ぶのだから。 でも、それでもかまわないじゃないか。 自分の心に正直になろう。 そのほうが後悔しない。 きっと後悔しないしないはずだ。 つまるところ、僕は、女のために残ると彼らに言うのが恥ずかしいだけなのだ。 決まった。 彼らに言おう。すべて正直に言おう。 僕はここに残る。 Ankiのいる西安に。 |



旅の序盤、僕はまだ異性を惹きつける人間的魅力を保持していたようだ。
旅の最中、僕は一度も髪の毛を切らなかった。
これから先、どんどん、仙人じみていって、男性的な魅力からは遠ざかっていく。
僕は当時からそんなに女性に興味を持っていなかった。
それよりもやりたいことが山ほどあった。
これが服装や身なりにあまり気を使わない理由でもある。
今でも変わってないこのスタンスは、この旅の中で身につけたもの。
序盤は、まだ少しモテたい感が残っている。
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