6時に起きた。 ちゃんと起きることができた。 彼女を大学の寮へ送らなければ、、 彼女はホテルに残るように言ってくれたが、僕も帰ることにした。 帰るとき、バスルームのシャンプーやボディソープを大量にポケットに詰め込んだ。 もうカッコつける必要はなくなっていた。 また、夕方会う約束をして、タクシーで別れた。 ドミトリーに戻ると、僕はすぐに眠りに落ちた。 何も考えたくなかった。 たびたび目が覚めたが、起きずにまた眠りに落ちた。 僕は、明日西安を去る。 ようやく体を持ち上げたのは昼過ぎだった。 さすがにもう体を動かさずにいることに耐えられず、西安城壁、南門のあたりをうろついた。 そこは中国の昔の町並みを再現した観光街で、いい雰囲気だった。 中国風のサテンでできた財布を買った。 昨日盗まれてしまった財布の代わりだ。 今度のは安っぽいからとられてしまうこともないだろう。 南門近くのユースホステルで電話をし、6時に待ち合わせをした。 これは、ごくあたりまえの一般論なのかもしれない。 もしかしたら、軽蔑されるたぐいのことなのかもしれない。 誰もが考えている、あるいは以前に考えたことのあることなのかもしれない。 もしかしたら、誰も共感できないことなのかもしれない。 深く考えすぎなのかもしれない。 もしかしたら、もっと単純なことなのかもしれない。 僕にはわからない。 僕はいままで、誰かと恋愛について深く話したことがなかった。 それはとてもプライベートな話題だからだ。 それについての価値観は違って当然で、深く話す価値もないと思っていた。 恋愛の話は嫌いだった。 少々、気色悪いが、 でも今日はここにこっそり書いてみよう。 これは、僕の恋愛についての話だ。 6時をすぎても、僕はホステルでコーヒーを飲んでいた。 彼女に会うのは気が進まなかった。 それにはいろんな理由が考えられた。 だけど、一番大きな理由はわかっていた。 彼女の愛の温度と、自分のそれの温度に明らかな差があることに耐えられなかったからだ。 その決定的な事実が、僕の足をひっぱった。 僕の思考は愛について、とりとめもなく集散していた。 僕は、しばしば愛と人生を天秤にかける。 それらは、僕にとって相容れないものだ。 本気で心から愛し合っている男女がいたとしよう。 その二人にとっては世界なんてちっぽけなものにすぎない。 彼らは、愛のために人生だって容易に捨てられる。 自分の命すらも。 愛のためにまったく人生を歪めてしまった人を、僕はたくさん知っている。 僕も女性を本気で愛していた時があったような気がする。 本気で人生をかけてしまったっていいと思ったこともあった。 その人のもとに一分でも早く行きたいというただそれだけの理由で警察のお世話になったこともあった。 今の僕は、冷静な人間になってしまった。 恋について。 愛について。 僕はとても冷静な人間になってしまった。 おそらく、何百、何千という女性と触れ合ってきたせいで、僕の中で愛というものが現実的なものになってしまったのだと思う。 愛は、夢も希望も未来も何もないものだ。 愛はただ、愛というものであって、それ以上ではない。 今の僕には、どんな愛も人生に優先させることはできない。 でも、こんなことも考える。 もし仮に、決定的で絶望的なほどに完璧な、完全な、最高の女性が目の前に現れて、そして僕を愛してくれたら。 そのとき、僕はどうなるかわからない。 あっけなく、瞬間的に僕の人生や命は無価値に変わってしまうかもしれない。 それを想像すると怖い。 しかし、どこかでそれを期待し、待ち望んでいる僕もいた。 彼女は、南門の下で待っていた。 |
ようは、魚を釣ったら飽きてしまっただけなのだが、
なんか、つらつらと書いている若い僕。
男に堕ちてボロボロになる女性を何百人、何千人と見てきた。
そのせいで、当時は、そうした女性を見ると引いてしまった。
そういえば、そんな感覚忘れてたな。
そういう悪い人が僕の周りから減ったからかな。
単純におっさんになって、
恋愛というものから離れただけかもだが。

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