もっと世界を知りたくて、
もっと自分の世界を拡げたくて、
昔はよく旅をした。
生まれてから30歳くらいまで飽きずに外に外に旅をし続けた。
まだ出会っていない世界、人を求めて。
大学時代に1年間海外放浪して地球をぐるりと巡り、
会社員やっていた頃は色んな国に出張した。
香港に住んでいた8年間も、よく中国各地を旅して回った。
訪れた国は約60カ国で、
長く滞在した順には香港、台湾、中国、UAE、タイ。
外に外に世界を拡げていって思ったことは、
どこまで行ってもそこは人の世界ということ。
どこに行っても人がいて、
思ったより共通の感覚でコミュニケーションができた。
見える景色はもちろん違うけど、それはテレビで観たことのある地球の景色。
印象に残ったことは同質性だった。
多分、世界は横に拡がって多様なのではない。
同じ空間に存在しながら、まるで違う次元に生きるかのように、
異なるライフスタイルを送る人たちがいる。
世界は縦に拡がって多様化している。
そう気づいた時、強迫観念のようにあった旅への衝動は消えた。
それから同じ場所で、違う生活をしている人たちに興味を持つようになった。
縦の目線で世界を見るようになると、香港という狭い土地は、
さまざまな人が集い生きる混沌とした面白い場所で、
8年生活しても飽きることがなかった。
山梨に帰ってきて1年余りが過ぎた。
その間、何度か県外に出たけど、
別に昔のような旅に出たいとはもう思わない。
旅をやり切ってしまった感覚は、
ゲームをクリアした時のように、
ちょっとした達成感と寂しさを伴って通り過ぎて行った。
でも、縦の探索はまだ続いている。
そっちの旅はまだまだこれから。
横の旅はどこかで飽きが来るけど、
縦の旅は多分、死ぬまで飽きることが無い。
縦の旅にとって、移動は必須ではない。
コロナ禍であっても、僕は山梨での生活を結構楽しんでいる。
コメント