今日は空がどんよりしていた。 万里の長城を早く拝みたかったけど、なるべく天気のいい日がいい。 僕の気持ちもどんよりして、ホテルでぐだぐだ。なかなか動く気になれない。 仕方ない。予定変更で紫禁城でも見てくるか。 チケット売り場に行く。 そこで見覚えのある髪型が不意に視界に入ってきた。 げ、、、あれはミツ?だ。ミツだ。ミツだ!! 中国に来ることは知ってはいたが、知ってはいたのだが、いや、知ってはいたのだ。が、まさか偶然にもこの日、この時間、この場所で、この半径10m以内にお互いが存在することになるとは!! とっさに僕に浮かんだ考えは、、、どこに隠れよう!! ん?なんで隠れるんだ?僕の思考回路はなんでこう不可解な、、、 いや、それよりも、奴に見つけられるのはダサい。 見つかるより先に飛び膝蹴りをくらわそう!! 僕は全速力で突撃した。 ズコっ しばしの沈黙。。。。 お互いの目を見つめあう二人。。。。 ミツ「あーーーーーーーーー!!」 ひとくん「あーーーーーーーーーー!!」 それからは、僕とミツと、ミツの友人でともに旅をしているというモリコーの3人で行動することになった。 まるまる二日間一緒にいて、二日とも夜遅くまで飲んだ。 ひさびさに話す日本語は、なんか新鮮だった。 漫画やアニメの話題から始まり、女のこと、友達のこと、サークルのこと、劇のこと、クラスのこと、教育のこと、人生のこと、いろんなことを肩を並べて話した。ガチで話した。 僕も、自身のバイブル、「東京大学物語」について、熱く語った。 とくに、村上直樹がトイレに突撃し、必死で隠そうとする遥ちゃんの足を強引にこじ開けるシーンの説明には力がこもった。 異国の地にいることが、僕たちを饒舌にさせていたのかもしれない。 ひたすら、止まることなくしゃべり続けた。 ミツは以前からの友人だ。しかし、こうして向き合って飲むのは初めてだった。 モリコーは、客観的に自分や周りの状況を判断できるくせに、それでも青臭いことを本気で語ることのできる魅力的な奴だった。 そんな男に、リーダーとして慕われているミツもなかなかの男だ。 彼らの心は、むきだしでなんの覆いもなくそこにあった。 それは、少し危なげで、不安定なようだけれど、居心地のいい刺激を僕に与えてくれた。 教育の世界で生きていくことを決めているモリコーは、日本に帰ったら教育の現場を知るために日本全国の学校を回るつもりだそうだ。 すべて自分で考えたことで、自分の力で成すつもりらしい。 そのことについて、彼がある社会人に話したとき、その社会人はモリコーに 「そんなに生き急ぐ必要はないんじゃないの?」 と言ったという。 そんな言葉は聴く耳持たずでいこうぜ、モリコー。 僕たち若者は、何も知らない。何も持たない。 何も持っていなかったら、自分たちでひとつひとつ掴み取っていくしかない。 わかった風な大人の言葉なんかじゃ僕たちは動けない。 人から聞いた話なんかじゃ、僕たちの根っこの部分は動かせないんだ。 僕が世界一周することを、ある社会人に話したとき、彼はこう言った。 「世界一周?そんなのつまらないでしょ。僕だったらしないなぁ。」 何十年か早く生まれただけで、わかった風な口を利くなよ。 やってみなきゃ、わかんねぇだろ。 型にはまった大人の助言なんか聞いてられるか。 僕たちにできることは、走ることだけだ。 走って、掴み取ろうともがくことだけだ。 自分たちの信じた道を、ひたすら走り続ければいい。 その先に何が待ってるかわかんないけど、もしかしたら馬鹿みたいなことかもしれないけど、なにも残らないかもしれないけど、なんの価値もないかもしれないけど、とことん突っ走ろうぜ。 たとえ価値がなくたって、価値がないとわかることに、価値があるんだ。 ナンパをするとき、僕が友人といつも言い合って勇気を奮い立たせていた言葉がある。 「声をかけるか、死ぬか!!」 僕たちにできることは、ひたすら走ることだけだ。 「走るか、死ぬか!!」 走るのをやめてしまえば、大切なものが死んでしまう。 どこまでいけるかわからないけど、できればずっと、できれば死ぬまで、 走り続けていこうぜ。 ミツとモリコーは、別れ際に、僕に唄を歌ってくれた。 モリコーが作った唄を、モリコーのギターの音にのせて。 二人の声が、北京の大通りの雑踏の中で、確かにそこに存在しているってことを世界に示した。 僕には、僕よりも二人のほうが旅人に見えた。 人生の旅人、 っていったら、ちょっとかっこつけすぎか。 |
ミツは、僕が香港で働いているときも香港に偶然赴任してきた。
1年間ぐらいの短い期間だけど、一緒につるんでいろんなことをした。
相変わらず熱くて、不器用で、お茶目で、
昔からなぜかいつも金が無い奴。
縁のある人とは、なぜか縁がある。
そういう縁はずっと大切にしていきたいと思っている。

この頃、紫禁城は修理中。

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