僕は動物が好きで、地図をみるとまず始めに動物園を探してしまうような人なので、インドはそういうことではとても楽しい。 いろんな動物が街に一緒に暮らしている。 公園にいけば必ずと言っていいほど、たくさんのリスがピョンピョン飛び跳ねている。 逃げていくおしりが可愛らしい。 実家で飼っていたウサギを思い出す。 あいつはちゃんと散歩にだしてもらってるだろうか。 寺院の薄暗い通路では、映画のお決まりの演出のようにバサバサとコウモリが飛んでくる。 こっちに向かって飛び掛ってくるのはなかなかスリルがある。 しかし、じっと顔を見てみると、なんともクリッとしたビーズみたいな目をしている。 どうやらコウモリはねずみに羽がついたような生き物らしい。 悪いやつではなさそうだ。 部屋の中にはなぜかよく、大きなトカゲがいる。 たまにドサっと天井から降ってくる。顔にだけは落ちてこないでくれよと念を押して僕は眠る。 こんなところにいてもご飯はないだろうと心配になって窓からだしてやるのだが、次の日になるとまた部屋の中に戻ってきている。 そうか、どうやらここは彼の部屋で、僕の部屋ではないらしい。 勝手に入ってきて追い出したりして、タチの悪い訪問者ですみませんでした。 ブタはなぜかいつも、ゴミ捨て場の汚くて臭いところに気持ちよさそうに寝ている。 体は汚れ放題だ。 どっかの宗教が彼らを不浄のものとしたのも理解できる。 確かに彼らは不浄な生き物だ。 ヤギは親子で歩いている。 子供が親についてぴょこぴょこ歩き回るのはどの動物も一緒だなと心が和む。 おい、そんなもんハミハミ噛むなよ、プラスチックだろ。 体に悪いだろ。 ふとみると、別のヤギがガケの高くて狭いところによじ登っている。落ちたら確実に複雑骨折は免れない。 どうして、僕たちはわけもなく高いところに上りたがるのだろう。 メーメー鳴いて、怖いくせに。 ガンジス河を見ようとベランダにでると、隣の部屋からサルがでてきた。手にはメディカルボックスを持っている。 どうやら、隣人がでかけている隙に泥棒に入ったらしい。 しかし、僕がここで見ているというのに全く気にしないようだ。 なんという度胸の据わったやつだ。こいつめ。 隣人のためにもメディカルボックスをなんとか取り戻したいと思った。しかし、さすがに奴もバカではない。 ベランダの縁に座って、僕が一歩でも近づいたらこの箱は下に落として粉微塵だぞ、といわんばかりだ。 僕はあきらめてただぼうぜんとなりゆき見つめていた。 警察に電話してももう手遅れだろう。 タケシさん、ごめんなさい。 メディカルボックスをひとしきり手にして物色した後、サルはささっと壁を登って僕に一瞥をくれて去っていった。 メディカルボックスは、サルとともに消えてしまった。 きっとサルの体調管理に有意義に使われることだろう。 もちろん、牛は常に視界に入っているというほどにたくさんいる。 インドでは牛は神聖な動物だからね。 教科書で勉強したした。 おおきなおなかを堂々と揺らして道を歩いていく。 道に座り込んでいるのがいると、リクシャーの親父がけつを棒でひっぱたいてどかす。 どっかの家庭でよく見かけるような光景だ。 僕がその体に手を触れると、牛はその部分だけゾクゾクっと皮膚を波立たせる。それを見ると僕もゾクゾクっとする。 狭いみちを歩いていると、喧嘩している牛がいる。 角を突き合わせているが、ふむ、どうやらそれほど真剣ではないみたいだ。なら止めることもないな。 むこうのシルクの洋服店では、中に牛が入って、しっぽをパタパタと揺らして棚を眺めている。 彼女は今日は何か着るものでも買うつもりなのかな。 ムンバイからバスで30分ほどのところにあるサールナートという村に行ってきた。 そこは、ブッダが始めて説法をしたという聖地だ。 その説法を聞いたのはブッダと親しかった5人の修行僧と、森の鹿たちだったそうだ。 サールナートには、鹿公園というのがあって、フェンスで区切られた向こうに鹿がたくさんいた。 彼らはブッダの説法を聞いた鹿の子孫だろうか。だったら素敵だな。 隣のフェンスの向こうには、子供を抱いた動物がいる。 布を身にまとって、 「マニー、マニー」 と鳴きながら、フェンスの向こうからずっと僕を見つめ、僕の後をついてくる。 ふむ。 あれが人間という動物か。 |
海外の発展途上国には、動物がたくさんいたのが好きだった。
当たり前なんだけど、
旅する先々で、地域ごとに違う種の動物たちが、人間と共存して暮らしていた。
日本だったら動物園の檻の中にいるような動物たちが、
人間と同じ空間を縦横無尽に暮らしていた。
今、ここ。
僕のいる山梨では、鹿やニホンザル、たまにタヌキがいる。
でも、そんなレベルじゃなく、
世界の街には動物が溢れていた。
日本だと、ちょっと出てきただけで、すごいニュースになって、
捕まえられたり、殺されたりしちゃうからな。
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